
陸上トラックを疾走する女性ランナーが日の丸を翻す表紙絵──競技の現場と、選手と指導者のあいだに揺れる感情を題に掲げた長編小説。柔らかな線で起こされたイラストレーションは、日本代表のユニフォームをまとった中央の人物を据え、観客席を色斑のように抽象化する。朱色のトラックと夕陽めいた光が画面全体を温め、右側に筆勢のある明朝で大きく組まれた題字が走者の弾む足取りと響き合う。競技の熱と物語の高揚を、ひとつの場面に閉じ込めた装い。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論