
奈々子に」「夕焼け」などで知られる詩人・吉野弘の自選的詩集。日常のささやかな景物と人の関わりを、平明な言葉で深く照らし出してきた仕事をまとめた一冊。深い藍色の地に、染付の猪口や碗が大小さまざまに散らされ、矢羽根や格子、草花の文様が白く抜かれている。中央には淡い生成の短冊が置かれ、明朝の細い書名と版元名だけが静かに刻まれる。器のひとつひとつに宿る手仕事のぬくもりと、余白の落ち着きが、生活のなかから言葉を掬い上げてきた詩人の姿に重なる装いとなっている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論