
ボクシング雑誌の編集者を主人公に、リングをめぐる人々の生き方と選択を描く長編。表紙は水彩のような淡い筆致のイラストで、青いマットの上、天井から鎖で吊られた二つのサンドバッグに向かうふたりの後ろ姿が描かれる。奥にはぼんやりと白いロープのリング、灰色の梁と壁。右側にゆったり余白を取り、縦組みの明朝体で題と著者名を配する構成が、騒がしさを抑えた練習場の空気と静かに呼応する。試合の華やかさではなく、その手前で積み重ねられる時間にまなざしを寄せた一冊。
著桜井美奈
装丁池田進吾+千葉優花子
装画カシワイ
講談社 / 2021年
文学・評論