
江戸・木挽町の芝居茶屋を舞台にした連作時代小説。役者や町人の往来が交差する茶屋を背景に、初午の稲荷信仰にちなむ事件が静かに動きだす。表紙は鮮やかな山吹色を地に敷き、背後に円い白抜きの月と稲荷の意匠を淡く重ねた構図。中央には狐面を片手に持ち上げた白い着物姿の人物が立ち、傍らには笹に載った稲荷寿司の皿が描かれる。舞い散る紅白の紙片が祝祭と謀事の気配を同時にまとう。鮮色の地と細やかな線描が、芝居町の華やぎと事件帖の影を一枚に束ねている。

著行成薫
装丁bookwall
装画井田千秋
角川春樹事務所 / 2021年
文学・評論