
舞台は江戸の居酒屋。看板娘こまりが客に酒と料理を運びながら、人々の願いや想いに寄り添う時代ミステリ連作で、料理の温もりと淡い恋模様、市井の謎解きが綴られる。表紙は和紙のような質感の上に水彩で描かれた店内の一場面。橙の着物の娘を中心に、職人風の客、刀を差した武士、振り返る三毛猫が配され、藍の暖簾と提灯の柔らかな光が夕刻の賑わいを伝える。題字は黒の角ばった明朝で右側に大きく据えられ、絵の温度と書の落ち着きが、人情と謎の同居する物語の世界に静かに導く。
著孫沁文、阿井幸作
装丁早川書房デザイン室
装画緒賀岳志
早川書房 / 2023年
文学・評論