
手出しを禁じられた伝説の巨鯨「権左」と、無謀にもそれに挑む男を描く海洋小説。江戸期の捕鯨図を思わせる古画を全面にあしらい、墨色に沈む巨鯨と、銛を構えてとり囲む小舟の群れを構図の中心に据える。タイトルは白抜きの明朝体で大きく置かれ、「の」をわずかに小さく組むことで横一文字に走る視線をつくる。下部には朱の帯が走り、「巨鯨を取らねば斬首」の縦書きが古画の静けさを断ち切るように差し込まれる。絵巻のような物語性と、命を懸ける一行の緊張感が、表と裏から響き合う一冊。
著桂望実
装丁高柳雅人
装画Jiwoon Pak
光文社 / 2022年
文学・評論