
理系・情報系の知識を持つ女性が、身の回りで起きる小さな事件を解き明かしていく連作短編。日常に潜む謎と、それを論理で読み解く視点が交差する一冊。表紙はオフィスチェアに腰掛けた人物を中央に据え、背後の本棚、傍らに置かれた台車のような屋台、湯気の立つ器など、生活の細部が淡い光の粒とともに描き込まれている。柔らかな黄褐色を基調にした透明感のある色面と、繊細な線で積み上げられた書き込みが、物語の温度を予感させる。タイトル文字は縦組みで右肩に大きく配され、画面の静けさを引き締めている。日常の片隅をのぞき込むような、観察者の眼差しが宿る装丁。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論