
夜の街と古いホテルを舞台に、灯りと人の気配が交わる場所をめぐる短編集。「電氣」という旧字が示すように、どこか昭和の残響を抱えた物語が、夜のとばりの下でひそやかに立ち上がる。表紙は青と藍のグラデーションで塗り分けられた夜空に、細い三日月。手前には階段の鉄骨やテレビアンテナを露わにしたビル群のシルエットが黒く沈み、屋上の縁には自転車に乗った人影がぽつりと置かれる。タイトルは白の明朝で控えめに据えられ、紙の地のざらつきが夜気の湿度をまとう。電気の名を冠した建物の、灯る前のひととき。その薄明を、静かな構図と限られた色数で抱きとめている。
装丁クラフト+エヴィング商會[吉田浩美+吉田篤弘]
クラフト・エヴィング商會 / 2018年