
誰にも記憶されない呪いを背負った女性アディ・ラルーが、三百年の時を経てようやく自分を覚えている男と出会う——その物語の終幕。下巻は、刹那と永遠、忘却と記録のあいだで揺れる魂の行方を静かに描き切る。深い闇を背景に、緑色に光るエメラルド状の結晶のなかへ一羽の鳥が飛び込むカバー。星屑のように散る小さな光と、ガラスの破片のような断片が散らばり、痛みと希望が同居する儚い結界を象る。閉じ込められた光と、そこを抜け出そうとする翼が、本書の主題そのものを映し出す。

著NabokovVladimirVladimirovich、若島正
装丁仁木順平
装画中村恭子
早川書房 / 2017年
文学・評論