
江戸情緒漂う「猫の手屋」を舞台に、人にあらざる者たちが交わる連作時代小説。困りごとを抱えた人々の前に現れる猫又たちが、ささやかな福を運んでくる物語が綴られる。表紙は和紙の風合いを残したアイボリーの地に、市松の着物をまとった白い大猫と、その頭に乗る子猫を水彩と墨線で描く。黄金の片目と青い瞳、淡くにじむ雲のあしらいが浮世絵的な軽やかさを宿し、朱の小さな印が画面を引き締める。柔らかな筆致が、怪異と人情のあわいに漂う温度を伝える。

著山崎ナオコーラ
装丁佐々木暁
装画工藤麻紀子
集英社 / 2015年
文学・評論