
副題に「著作権仮稼コンテンツ」と添えられた一冊。物語の輪郭は伏せつつ、デジタル時代の創作と権利をめぐる気配が静かに漂う。表紙は淡い水彩で描かれた少女の図像が中心を占め、青みがかった髪と黄色のカーディガン、チェックのスカートが柔らかな筆致で重ねられる。背景には薔薇やピアノの鍵盤、断片的に散る紙片が透けて広がり、輪郭線の繊細さと余白の白が画面に静けさをもたらす。タイトル文字は細身の明朝で淡く配され、絵の浮遊感を損なわない。少女の伏せた目とほどけていく装画の層が、内容の核にある曖昧な所有と感情の重なりを暗示している。

著夏来健次、平戸懐古
装丁山田英春
装画Cornelis Floris
東京創元社 / 2022年
文学・評論