
雪深い夜、森のなかに孤立する館で起こる事件を描いた本格ミステリの上巻。閉ざされた空間という設定そのものが、緊張と謎の輪郭を静かに浮かび上がらせていく。表紙には、降りしきる雪に半ば埋もれた低い館がぽつりと佇む。窓から漏れる橙色の灯と、背後の森を染める炎のような朱が、青く凍てついた夜と鋭く対比する。タイトル文字は雪の白に溶けつつ輪郭を保ち、静謐さと不穏さを同居させている。冷たい孤絶と内に灯る熱――その緊張が、館の内側で進行する出来事を予感させる。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論