
武蔵野を舞台に、地下に潜む迷宮的世界を描くミステリ。副題に「多重迷宮」と添えられ、表層からは見えない街の裏側へと読者を導く一作。表紙上半分には、夜の工場群らしき構造物が天地逆さに配置され、青と緑を帯びた光が暗闇に滲む。下半分の漆黒には、細身のサンセリフ仮名で組まれた書名が縦に走り、欧文タイトルと著者名は小さく寄り添う。反転した光景と沈黙する黒の対比が、地上と地下、表と裏が幾重にも折り重なる「多重」の感触を、視覚そのものに翻訳している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論