
骨を愛する標本士・櫻子と高校生・正太郎が日常の奥に潜む死を解いてゆくミステリ連作の一冊。本作は表題作を含む短編集として、夏のひとときを切り取る。表紙はガラス格子の窓辺に佇む長い黒髪の少女のイラスト。外には眩い緑と向日葵らしき黄が透け、室内は飴色の木目が静かな陰影をたたえる。白いワンピースの手に提げた赤い西瓜が一点の色彩として効き、タイトル文字は淡い水色で涼やかに置かれる。明るい夏景の只中に伏せられた静かな眼差しが、不穏な表題と響き合う。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論