
チェーホフが1896年に発表した戯曲『かもめ』の新訳。湖畔の屋敷を舞台に、芸術への憧れと報われぬ恋がもつれあう四幕劇を、現代日本語で読み解く一冊である。表紙は色鉛筆のざらついたタッチで描かれ、画面の上半分には赤い緞帳がたっぷりと垂れ、その隙間からのぞく灰青の空間に白い一羽のかもめが立つ。下半分はオレンジの市松状の床面が広がり、舞台の内と外、虚構と現実を分かつ境界そのものが画面に刻まれている。手描きの素朴さが、戯曲の張りつめた寓意をやわらかく受けとめている。
著佐藤雫
装丁アルビレオ
装画立原圭子
集英社 / 2022年
文学・評論