
戦国時代に井伊家を率いた女領主・井伊直虎の生涯を描いた歴史小説。男装し家督を継いだ女の覚悟と、戦乱に翻弄される一族の物語が、緊張感をもって紡がれる。表紙はほとんどの面積を朱色が覆い、長い髪の少女の顔がこちらを射抜くように据えられている。背後には桜の花弁、井伊家の家紋らしき「井桁」、そして血を思わせる滲みが重なり、強い筆致の墨文字タイトルが画面を貫く。紅と黒の二色が、剣を執った女領主の凄絶な内面と時代の修羅をそのまま象徴している。

著綾辻行人
装丁鈴木久美
装画遠田志帆
KADOKAWA / 2023年
文学・評論