
モンゴル草原を駆け抜けたチンギス・カンの生涯を描く長大な歴史小説、その第九巻。ナイマン王国との戦いを軸に、テムジンが「我が名はチンギス」と名乗るに至る転換点が綴られる。深い紫紅を地に、咆哮する獣の線画が大きく刷り込まれ、銀の箔押しで配された巨大な「日輪」の二字と、上部の細い明朝のタイトル、丸囲みの「九」が緊張感をもって並ぶ。下半分に白の帯を効かせ、抜き書きの台詞「我が名はチンギス。」を据えた構成が、荒々しい意匠と静かな書物の佇まいを同時に保っている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論