
停滞した日常を抜け出そうとする女性作家を描いた長篇。書けなくなった主人公が、別の人生の可能性へと踏み出していく物語である。表紙はやわらかな生成りの地に、青や紫、橙の樹々、巨大化したオレンジの本と小さな椅子、画面手前を悠然と占める黒猫を配した手描きのイラストレーション。版画めいた線と素朴な彩色が、現実とおとぎ話のあいだを行き来する。タイトルは右肩に静かに縦組みで添えられ、絵の自由な気配を邪魔しない。揺らぐ自我と空想が等価に並ぶ装いが、別の人生を夢みる物語の手触りをそのまま伝えてくる。
著園子温
装丁坂本志保
装画ミロコマチコ
文藝春秋 / 2018年
エンターテイメント