
高校生たちの早朝の電車を舞台にした短編連作。日常の片隅で交わされる、誰にも言えなかった会話や思いを掬い上げていく。表紙はがらんとした車両の内部を一点透視で描き、淡い水色と薄緑のグラデーションが朝の光をそのまま閉じ込めている。線画は細く繊細で、座席の柔らかな曲線や吊り革の連なりが空気の透明感を強める。リュックを背負って通路を歩く一人と、奥に座る一人。タイトル文字は明朝で四角く区切られ、静けさの中に小さな緊張を置く。誰もいないようでいて誰かがいる、その薄明の質感が物語の温度をそのまま伝えている。

著加門七海
装丁山影麻奈
カバー写真加門七海
集英社 / 2014年
文学・評論