
作者が愛犬ギーと過ごした日々を綴る、エッセイ漫画。鼻水を垂らしながら枝をくわえて駆けてくる犬の姿に、別れたあとも続く「いい時間」が滲む。淡い若草色を背景にすえ、手描きの線と水彩のような淡い色彩で犬を大きく一匹だけ配し、ひらがなのタイトル文字も同じ手の温度で揺れている。小鳥や葉のささやかなモチーフが余白を泳ぎ、画面全体がスケッチブックの一頁のように開かれる。素朴な筆致そのものが、失われた時間をやわらかく抱きとめるための器になっている。
著いとうせいこう
装丁佐藤亜沙美
河出書房新社 / 2014年
文学・評論