
人類が生殖能力を失った遠い未来。人造の存在「ウォーカロン」と人とのあいだに横たわる境界を、静かに問い直していく長編シリーズの第一作。クリーム色の地に、深い藍を背景とした小さなコラージュが置かれる。破かれた紙片、タイプ打ちの英文、絡んだ糸が層をなし、紙の透けや擦れた質感がそのまま画面に残る。タイトルは右に縦組みで控えめに添えられ、図像との余白が思索の間合いを生んでいる。断片と糸の重なりは、判別しがたいものの輪郭をそっとなぞる手つきにも似て映る。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論