
ふたりの作家がそれぞれの記憶や経験と結びついた食の場面を、小説や随筆から拾い上げて綴った読書エッセイ集。文庫として再編集された一冊で、本を介してたどる食の風景がゆるやかに重なり合う。生成り色の地に、版画調の質感をもった熊と犬らしき二匹の動物がそれぞれ向き合うように配され、コーヒーカップや串、果物、開かれた本といった小さなモチーフが余白に散らされる。タイトルの「食」一字だけが山吹色で差し色となり、著者名は細い罫線で静かに区切られている。素朴な手仕事の図像が、語り口の異なる二人の往復書簡めいた構成と呼応している。
著青柳碧人
装丁川谷康久
装画MITO
新潮社 / 2019年
文学・評論