
星野智幸による長篇『呪文』。匿名化されゆく街と、そこに渦巻く同調の力学を、静かな筆致で照らし出す一冊。白い余白を大きくとった表紙には、自転車を押す人や買い物袋を提げた人々がモノクロのスケッチ調で群れをなして歩き、その上に「呪文」の二字が金茶のたよりない手描き線で大きく置かれる。著者名は縦に分かち書きされ、群衆の中へと沈み込んでいく。柔らかい線でありながら不穏に揺らぐタイポグラフィが、日常の風景にひそむ言葉の呪縛をそっと可視化している。

著EverettPercival、木原善彦
装丁鈴木成一デザイン室
装画吉田雨水
河出書房新社 / 2025年
文学・評論