
カリブの島を舞台に、家族の記憶と土地の歴史を編み直すフランス語圏文学。白い余白を大きく取った判型の中央に、海辺に佇む人物を描いた絵画がポストカードのように配される。鮮烈なピンクのトップス、黄色い砂浜、青緑の海と空——色面はやわらかな筆致で塗り重ねられ、奥には別の人物の後ろ姿が小さく置かれて、視線が交わらないまま同じ風景を分け合う。縦組みの和文タイトルと、下端に大きく流れる原題のラテン文字が、遠い土地の物語を静かに日本語の側へ手渡している。

著井上ひさし
装丁山田和寛+佐々木英子
装画やべみつのり
作品社 / 2023年
文学・評論