
クリスティの古典を踏まえた短篇集で、消えゆく人々をめぐる謎を軽やかな語り口で束ねた一冊。表紙は深い赤を地に、白い明朝で題と著者名を上段に整える。中央に置かれた黒いシルクハットからは、尖塔の家々、ろうそく、髑髏、黒猫、傘をさす人影、舞い落ちる小鳥が立ちあがり、絵本のような筆致で小さな劇場をかたちづくる。下には英題が控えめに刻まれ、種明かし手前の余白を残す。手品師の帽子から生まれた幻想として、消失と出現の物語をひとつの図像に閉じ込めた装丁である。

著木下半太
装丁鈴木久美
装画ワカマツカオリ
KADOKAWA / 2014年
文学・評論