
河川敷の土手でサックスを吹く青年と、その傍らで楽器を抱える少女。手前には停められた青い自転車、奥には川向こうの街並みが広がる。音楽を通じて若者たちが交わす時間を描いた青春小説と見える。装画は澄んだ水色の空と若草の緑を主軸に、雲や校舎を柔らかな筆致で配し、画面左上から舞い散る楽譜の紙片が風の存在をかたちにする。タイトルは丸みのある黒の太字で軽やかに置かれ、書体そのものが音の弾みを示す。風景と文字が一拍ずつ重なって、ひと夏の旋律を静かに立ち上げる。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論