文学・評論
鬼溜まりの闇 素浪人半四郎百鬼夜行(一)
芝村凉也
素浪人・半四郎が市井に紛れる鬼や物の怪と交わっていく怪異譚、その第一巻。夜ごとに百鬼夜行の滲み出す闇を、ひとりの剣客が静かに見据えていく連作の幕開けとなる一冊である。表紙は淡い水彩の筆致で、生い茂る木々の青緑と澄んだ空の水色を背景に、柿色の小袖をまとう剣客、黒衣の僧形、そして角を持つ童女が、それぞれ距離を置いて佇む。空をよぎる一筋の鬼火が穏やかな画面に異界の気配をひとしずく落とし、人とあらざるものが薄明に混じり合う物語の呼吸を、表紙の側からそっと差し出している。