
郊外の住宅地「桃ノ木坂」を舞台に、住民たちの小さな共同体を描く長編小説。表紙には、巨大なきのこ・ブロッコリー・トマト・パプリカが街路樹や建物のように並び立つ「野菜の街」を、ミニチュアの人形たちが行き交う情景写真が大きく配されている。被写界深度を浅く絞り込んだ撮影が日常の風景をどこか寓話めいた縮景に変え、上部の白抜き明朝で組まれた著者名、下部の朱地に白抜きされた書名が、色彩過多な画面に静かな縦軸を通す。生活と寓意が同じ画面に同居する装丁が、地続きの町に潜む可笑しみと不穏を予感させる。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論