
芥川賞の候補に挙がりながら受賞を逃した作品を集めたアンソロジーの平成編第一巻。1989年から1995年、昭和から平成へと移り変わる時代の空気を、新鋭作家たちの短編で辿る一冊である。表紙はクリーム色の地に、太く重心の低い明朝風の和文タイトルを大胆に組み、紙面の縦横に文字をぶつけるように配する。中央には金魚を一匹だけ泳がせたグラスのシルエットが黒一色で大きく描かれ、活字とイラストが同じ強度で拮抗する構図になっている。受賞という枠から「落ちた」傑作を、狭い器の中で確かに生きるものとして示すような装丁だ。
著尾崎世界観
装丁古屋郁美
文藝春秋 / 2019年
文学・評論