
時を越えて届く一通の葉書をめぐり、過去と現在が交差していく長編ミステリ。差出人のない便りが、忘れ去られたはずの事件と人の輪郭を少しずつ浮かび上がらせる。表紙は黒地に浮かぶ旧式の円筒型郵便ポストを大きく据え、投函口へ葉書を差し入れる手が画面中央で止まっている。朱赤の質感は油彩のような筆致で重ねられ、影の輪郭にざらついた線が走ることで、どこか古い記憶を覗き込むような気配が漂う。タイトルの白い太いカタカナがポストの赤と切り結び、投函された一枚の手紙が時間を封じ込めるカプセルになる、その瞬間を装画と書名が静かに重ねている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論