
1964年の東京五輪を「光」ではなく「影」の側から捉え直したNHKスペシャルの書籍化。労働者搾取、貧困、格差、猟奇犯罪——高度成長の裏で進行した諸相を、当時の記録から掘り起こす一冊。表紙は東京上空からの航空写真を深い赤一色で染め抜き、競技場や市街地のかすかな起伏を血のような色面に沈めている。中央には黒い明朝の「1964」と白抜きの「東京ブラックホール」を重ね、周囲には縦組みで「労働者搾取」「猟奇犯罪」などの語が散る。鮮烈な赤と黒のコントラストが、祝祭の年に呑み込まれていった無数の出来事の暗さを、視覚そのものとして突きつける。

著吉田恵里香
装丁bookwall
装画あわい
NHK出版 / 2022年
文学・評論