
作家の父・井上光晴、その母、そして瀬戸内寂聴をモデルに、三人の〈特別な関係〉と〈書くこと〉を、長女である著者が描き切った長編。表紙は、白地の中央に座る女性裸体の絵を大きく配し、淡い肌色の柔らかな筆致と短く整えられた黒髪が、どこか古典的な趣を漂わせる。タイトルは細い明朝で縦に置かれ、「鬼」の一字だけが朱で抜かれて静かに光る。帯には赤い縦書きで「不倫が始まった時、作者は五歳だった。」と告白めいた一文。余白の白さが、語り得なかった記憶と向き合う筆の距離を、そのまま手渡してくる。

著EverettPercival、木原善彦
装丁鈴木成一デザイン室
装画吉田雨水
河出書房新社 / 2025年
文学・評論