
深夜にだけ開く小さなカフェ「マカン・マラン」を舞台に、夜食と人の物語が静かに重ねられていく一冊。深い藍をまとった布目のような地に、ふちに細やかな模様の入った皿、湯気の立つ料理、両脇に置かれたフォークとスプーンが、やわらかな筆致で正面から描かれる。タイトルは縦組みの明朝で右上に小さく収め、余白を多く残すことで一枚の食卓を覗き込むような視点をつくっている。深夜の灯りに照らされた一皿の親密さが、装画と余白の呼吸によってそのまま手に届く。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論