
古い劇場に住まう幽霊たちと、その舞台に迷い込む少女の物語。歴史と虚構が交差する、児童文学の名手による長編の翻訳作品。鮮やかな朱色の緞帳を背景に、シルクハットの紳士、楽器を抱えた人物、ロバや小動物まで、登場人物たちが舞台のアーチを縁取るように左右対称に配置される。中央には小さく描かれた劇場の白い建物と、その前に佇むつば広帽の少女。色鉛筆と淡い水彩で描かれた人物には灰色の陰影が落ち、すでにこの世の者でないことを静かに告げる。賑やかでありながらどこか寂しい、舞台幕が開く一瞬の空気をそのまま閉じ込めた装丁。
著遠田潤子
装丁大久保伸子
装画いとうあつき
小学館 / 2021年
文学・評論