
左眼に赤を宿す青年が、人気のない部屋でこちらを見据えている。死者の魂を視る青年・斉藤八雲を主人公にしたシリーズ第10作で、過去と向き合いながら事件と対峙する物語が綴られる。黒地に白抜きの縦組みタイトル、明朝の太い「八雲」が画面右をしっかりと支え、左にはモノクロームの線画で描かれた人物が淡い水彩のにじみとともに浮かぶ。背後に滲む青やピンクのインクは魂の揺らぎのようでもあり、漆黒の余白と相まって、霊と人の境界を行き来する物語の静かな緊張をそのまま装丁に写し取っている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論