
1949年、ナクバの渦中で起きた暴力と、現代にその痕跡を追うパレスチナ人女性。二つの時間を結ぶのは、歴史の大文字からこぼれ落ちる匂い、音、身振りといった「細部」であり、抑制された文体が日常に潜む支配の輪郭を鋭く浮かび上がらせる。鮮烈な黄の面に乾いた風景を低く沈め、余白を広く取った装画は、静けさの底にある不穏を増幅する。下部を斜めに切る白地と端正な文字組みが、断絶した土地と記憶を一枚のカバーに緊張感をもって定着させている。

著井上ひさし
装丁山田和寛+佐々木英子
装画やべみつのり
作品社 / 2023年
文学・評論