
戦時下の少女モモが、追っ手から逃れて広大な土地を渡っていく長い旅路を描く長編。固有の地名を匿しながらも、東欧的な土と風の匂いを纏った物語が広がる。表紙は、刷毛跡の残る淡い空の下に黄土色の枯野が傾斜して伸び、遠景の小さな家々と裸木、そして赤いスカートの少女の後ろ姿が点として置かれる。上半分にはキリル文字で原題と思しき文字列が薄く重なり、明朝体の和文タイトルがその上に静かに載る。広漠とした風景に小さな身体を置く構図そのものが、逃げ続ける者の心細さと前へ進む意志を同時に映し出している。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論