
鎌倉で代書屋を営む文具店主・鳩子が、依頼人の事情に寄り添いながら他人のための手紙を書き継いでいく連作短編。亡き祖母から受け継いだ町と仕事、人々との細やかな交わりが季節とともに描かれる。生成り色の地に、藍のペン画で坂道に佇む木造の二階家と豊かな緑の樹冠、それを囲む木立や草地が俯瞰で線描され、唯一その椿らしき木だけが淡い萌黄で彩られる。題字は朱に近い赤の角張った活字、著者名は黒の明朝で控えめに置かれる。手書きの線が紡ぐ静かな町の景色と、一点だけ灯る緑が、便箋に綴られる言葉の温度をそのまま装丁に移している。
著木村俊介
装丁佐々木暁
幻冬舎 / 2017年
文学・評論