
フランスの作家による警察小説。海神ネプチューンの三叉槍を凶器に見立てた連続殺人が、主人公の警視を過去の影へと引き戻していく一作。表紙は、燃えるような橙の積雲を背に、帽子をかぶり三叉槍を携えた人物の黒い後ろ姿を中央に据える。下半分は森と闇に沈み、白い明朝体の和文タイトルだけが静かに浮かぶ。原題のフランス語がその上に小さく添えられ、絵画的な不穏さを保ったまま文庫の佇まいに収まっている。物語の神話的な題材と、絵物語のような陰影の構図が、一枚の挿絵として響き合う。

著乾石智子
装丁内海由
装画羽住都
東京創元社 / 2021年
文学・評論