
怪盗にして探偵という二重の貌を持つ青年・山猫を主人公にしたシリーズの一冊。今作では「虚像」をめぐる事件が立ち上がり、自己と他者の像が交錯していく。カバーは黒を基調に、グラスを掲げて立つ青年のイラストを中央に据え、背後には機械仕掛けの歯車めいた装置がうっすらと浮かぶ。タイトル「山猫」は白の明朝で大きく抜かれ、英字の副題が細く添えられて静かな緊張を生む。光と影をはっきり分けた構図そのものが、虚と実のあわいを行き来する物語の輪郭を縁取っている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論