
耳の聴こえない両親、宗教にのめり込む祖母、暴力をふるう祖父——複雑な家族と生きてきた著者が、自らのルーツをほどいていくノンフィクション・エッセイ。表紙は朱赤の地に白抜きの題字をどっしり据え、その隣にレンガ造りの古い家屋の前で並ぶ三人を描いたイラストレーションを配する。緑の庇や木製扉、足元の小さな鉢植えまで、生活の手触りを残した筆致が選ばれている。鮮烈な色面と、ささやかな日常を写し取った絵。両者の温度差が、笑いと痛みが同居するこの家族の肖像を予感させる。
著増田忠則
装丁國枝達也
装画小山義人
双葉社 / 2023年
文学・評論