
房総の小さなホテルを舞台にした群像劇。年齢も役割も異なる人々がひとつ屋根の下で交差し、ひと夏の時間を共有する物語が描かれる。カバーには白い建物の前に並ぶ六人の人物が線の細いイラストで配され、エプロンや白衣、セーラー服といった衣装が彼らの立場をそっと示す。背景の海と空は淡い水色のグラデーションで満たされ、タイトル文字も同系色で抜かれて夏の透明感に溶け込む。手前のタイル床のかすかな陰影が、潮風の通る静かな午後を立ち上げ、人物たちの距離感そのものを画面の温度として伝えている。
著増田忠則
装丁國枝達也
装画小山義人
双葉社 / 2023年
文学・評論