
江戸の旅籠を舞台にした人情時代小説シリーズの第三弾。料理自慢の宿で起きる人間模様と、不良娘や柴犬を巡るひと騒動が、温かなまなざしで描かれる。表紙は障子の桟を思わせる格子と、柚子色を散らした淡い背景に、前掛け姿で椀を抱える女性、若い武家風の人物、そして首に布を結んだ柴犬を配した手描きのイラスト。「しみみ」の四文字だけを大きく筆書きにし、副題と著者名は端正な明朝で添えるという緩急のあるレタリングが、軽妙な物語のテンポをそのまま誌面に翻訳している。湯気の立つような余白の使い方が、しみじみと染みる味わいを視覚に伝えてくる。

装丁岡本歌織
装画原倫子
マガジンハウス / 2024年
文学・評論