
母から見た息子、その理解しがたい暴力をめぐる長篇の下巻。語り手の独白が頂点へと向かう、加害と愛の臨界点を描く文学作品である。カバーは少年が頭蓋骨に口づけるモノクロームの絵画を大きく配し、上半分にだけ画面を持たせて下半分は余白として残す構図。明朝の縦組タイトルは黒一色で、装画の灰色のトーンと拮抗するように右上から落ちる。骨と肌、口づけと拒絶——相反するものが静かに重なる装丁は、本書の主題そのものを一枚の沈黙として差し出している。
著平沢逸
装丁川名潤
カバー写真竹之内祐幸
講談社 / 2024年
文学・評論