
戦後イタリアで実際にあった「幸せの列車」——南部の貧しい家庭の子供を北部の家庭が一時的に受け入れた社会活動を、7歳の少年の視点で描く長編。表紙は深い黒を背景に、列車の窓辺で向かい合う二人の子供を粒子の粗い筆致で描き、座席の間には小さな赤いりんごがひとつだけ置かれる。タイトルもまた同じ赤で刻まれ、夜の闇に灯る果実の色が、見知らぬ土地へ運ばれてゆく不安と、その先で芽吹くかすかな温度を静かに繋ぐ。
著仁木悦子、角田喜久雄、石川喬司、ほか
装丁坂野公一+吉田友美
装画水沢そら
河出書房新社 / 2021年
文学・評論