
昭和の主婦たちの欲望や友情を、軽やかな筆致で描いた連作短編集。深い藍色の地に、巨大なカクテルグラスへ身を沈める女性が手描きの絵で立ち上がる。レモン、苺、葡萄、すいか、林檎——色とりどりのフルーツが脚もとを埋め、背景にはハートや三角、丸のかたちが小さく散らされて、夜のパーティーの灯のように瞬く。手描きならではの揺らぎのある線と、ポップでありながらどこか官能的な構図が、日常の裏でくゆる女性たちの「クレイジー」を絵として翻訳している。

著中村航
装丁関口信介
装画チカツタケオ
文藝春秋 / 2017年
文学・評論