
タイトル「芥虫」は、塵や芥のうちに蠢く小さな生を見つめる視線を予感させる。表紙には、白いシャツの人物が卓に両手をつき、深く頭を垂れる姿が、筆の跡を残したまま淡い紫と灰のモノトーンで描かれる。輪郭はにじみ、重力に引きずられるように背がうつむいていく。右上には太い明朝の二文字が、その湿った沈黙を断ち切るように据えられ、横にひそやかな欧文と著者名が添えられる。絵の柔らかさと書名の硬さの落差が、卑小な生のざわめきを表紙のうえに閉じ込めている。
著石井颯良
装丁西村弘美
装画ほんわ
KADOKAWA / 2016年
文学・評論