
日本近代詩を切り拓いた萩原朔太郎の代表作を収めた一巻。「月に吠える」「青猫」をはじめ、口語自由詩の可能性を押し広げた言葉が時代を越えて手元に届く。深いチャコールグレーの地に、淡い黄緑のマスカットが粒の透明感まで描き込まれ、画面いっぱいに散らされている。中央に小さく置かれた象牙色の題簽には明朝の著者名と書名が静かに収まり、果実の艶やかさと余白の暗さが互いを引き立てる。果実の瑞々しさが、朔太郎の詩に潜む生々しい感覚と響き合う一冊。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論