
戦う理由もない「僕」の前に現れた一羽のカラス。導かれた先で待つものは何か——日常から逸れた声に耳を澄ます小説。くすんだベージュの地に、青を孕んだ黒で精緻に描かれた一羽が大きく構図を占め、その羽の上に白いタイトル文字が重なる。一部の画数が欠けたような硬質な書体が、鳥のシルエットに食い込みながら断片的に浮かび、下部には「至急連絡をください。」と切迫した一行。静かな色面と鋭い余白が、物語の不穏な気配を立ち上げている。

著ミラン・クンデラ、西永良成
装丁田中久子
装画横山雄
集英社 / 2024年
文学・評論