
チェコ出身の作家による、速度に追われる現代と、過ぎ去った時代の「緩やかさ」を対比させながら綴られた小説。ある夜の城館を舞台に、現代の男女と十八世紀の逸話が交錯し、記憶・快楽・忘却の関係を軽やかな筆致で描き出す。表紙はあざやかなオレンジを地に、線描で人物の輪郭だけを掬い取った構図。黒い細線が身体のかたちを素早く辿り、白いストロークが画面を斜めに走って、静止した姿勢のなかに微かな速度を残す。緩急のあわいに身を置く、そのまなざしのための一冊。

著ミラン・クンデラ、西永良成
装丁田中久子
装画横山雄
集英社 / 2024年
文学・評論